政治学科 舛方周一郎
MESSAGE
担当教員は、いまの皆さんと同じ大学生のときにバックパッカーとしてラテンアメリカを中心に世界中を旅しました。その旅の中で多くの人に出会い、純粋に心を痛めたり、ときめいたり、あるいは熱くなったりした経験から、次第に研究者を目指すようになりました。いまでは国際関係論と比較政治学を専門とし、ブラジルを中心としたラテンアメリカの政治・外交・環境について研究しています。
本研究会をどのように活用するかは皆さんに委ねられています。研究のテーマは学術的・社会的に意義のあるものを選ばなければとあまり片意地を張らず、まずは自身の問題関心(例えば、皆さんの生い立ち、日常生活の中で抱く違和感、大好きな趣味、今までの失敗経験、内なる動機など)を中心に考えてみましょう。自分の中で何か引っかかるものだからこそ、それを形にすることは大学生活という皆さんの人生の中でも特に大切で限られた時間を費やすに値するものとなります。なにより自分自身が研究をしていて楽しいでしょう。
変化が目まぐるしい現代だからこそ、いまを生きる私たちもその変化に適応しながら、常に変化していくことが求められています。ラテンアメリカと世界を行き来しながら、新しい領域を開拓する好奇心と創造力をもった冒険者たちにお会いし、併走できることを楽しみにしています。
入ゼミに関して質問があれば、舛方(masukata.s83@gmail.com)までお問い合わせください。
PROFESSOR & MEMBER
舛方周一郎(ますかた しゅういちろう) 准教授
専門分野 現代ラテンアメリカ政治、ブラジル研究、環境政治
政治・社会の分極化の深刻さが伝えられるブラジルを中心にラテンアメリカにおける政治・外交・環境のメカニズムを分析する他、エネルギー・気候変動分野を通じた先進国・新興国・途上国間の協力関係を考察するために、ラテンアメリカの各国で継続的に現地調査を行っています。
担当学科科目
日吉:政治学基礎、演習Ⅰ・Ⅱ
三田:現代ラテンアメリカ論I・II、研究会、地域研究・比較政治論特殊研究I・Ⅱ
(大学院)
略歴
1983年 群馬県生まれ
2007年 上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業
2009年 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程修了
2018年 上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了
博士(国際関係論)
2014年 神田外語大学外国語学部イベロアメリカ言語学科講師 着任
2020年 東京外国語大学世界言語社会教育センター講師 着任
2024年 東京外国語大学総合国際学研究院准教授 着任
2025年 現職予定
在外研究
2012年 サンパウロ大学国際関係研究所客員研究員(IRI USP)
2020年 ロスアンデス大学政治学部客員研究員
2024年 ポルト大学文学部歴史・国際関係論コース派遣教員
主な著書
・Coauthor: “Elecciones presidenciales de Brasil del 2018 y el paradero de la “Democracia Iliberal,”” en Yusuke Murakami y Enrique Peruzzotti coord, América Latina en la encrucijada: coyunturas cíclicas y cambios políticos recientes (2010-2020), Editora Universidad Veracruzana、2021.
・Coauthor: “Global Environmental Governance and ODA from Japan to Brazil” (with Cristina Yumie Aoki Inoue, Nanahira de Rabelo e Sant’Anna) In Nobuaki Hamaguchi and Danielly Ramos, eds. Brazil—Japan Cooperation: From Complementarity to Shared Value | SpringerLink, 2022.
・Coauthor:“Illiberal Bandwagoning: United States–Brazil Relations under the Trump and Bolsonaro Administrations ” Hiroki Kusano and Hiro Katsumata eds.Non-Western Nations and the Liberal International Order: Responding to the Backlash in the West (routledge.com),2023.
・単著:『舛方周一郎 著『つながりと選択の環境政治学―「グローバル・ガバナンス」の時代におけるブラジル気候変動政策』 (jst.go.jp)』、2022年、晃洋書房。
・共著:『世界の中のラテンアメリカ政治』|東京外国語大学出版会 (tufs.ac.jp) 2023年、宮地隆廣氏との共著。
その他の詳細な経歴・業績・著書は researchmap をご覧下さい。
趣味
旅行、ランニング、レズミルズ(ボディコンバット)、サッカー
好きなラテンアメリカ映画
アンドレアス・ウッド監督『マチュカ 僕らと革命』2004年。
ウォルター・サレス監督 『モーターサイクル ダイアリーズ』2004年。
入ゼミ案内
1.本研究会の内容:世界の中のラテンアメリカ政治・外交・環境
本研究会は、現代ラテンアメリカの政治・外交・環境について研究します。研究会は、ラテンアメリカ域内の政治経済社会の課題の分析に加えて、ラテンアメリカを起点に、先進国・新興国・途上国との関係を、様々な観点から議論したいと思います。他学部からの応募も歓迎します。
具体的には、次のような方法で研究を進めたいと考えています。
【3年生】
第一に、世界の中のラテンアメリカの政治・外交・環境にかかわる幅広い基礎文献を読みます。(例えば以下の本が候補です。)
・アミタフ・アチャリア『アメリカ世界秩序の終焉 マルチプレックス世界のはじまり』(ミネルヴァ書房、2022年)
・ディエゴ・サンチェス=アンコチェア『ラテンアメリカにおける不平等:それが理論と政策に対して意味するもの』(東京外国 語大学出版会、2025年近刊)
・村上勇介・出岡直也・山岡加奈子編『現代ラテンアメリカ政治』(法律文化社、2025年近刊)
書籍を読むだけではなく、ラテンアメリカに関連する国内外のゲストスピーカーをお招きしたいと考えています。
第二に、本研究会に入った3年生には、4年次に卒業論文を書き上げ、提出することを約束していただきます。3年生の秋学期には、学術論文(文献レビュー)の書き方、資料収集の方法について学び、4年次にスムーズに卒業論文執筆に入るための研究計画書の作成を進めます。
第三に、他大学(神田外語大学、津田塾大学、獨協大学、上智大学、東京外国語大学)のラテンアメリカ研究ゼミとのインカレ・ゼミが毎年1度開かれます。合同ゼミは、本研究会の秋学期で取り組んできた課題を集大成する大切な機会となります。昨年度の様子は、PDF資料をご覧ください。
その他の活動(外務省中南米局・JETRO/JICA・新聞社、日系ラテンアメリカ人コミュニティなど関連機関・地域への訪問、夏合宿、三田祭など)については、皆で話し合って決めましょう。
【4年生】
卒業論文の執筆を進めます。少人数のグループ内での中間報告、ゼミ生全員の前での中間報告を経て、12月末までに学術論文を書き上げます。(教員は初年度のため、来年度は開講されません。)
2.開講曜時限:春・秋 木曜4時限
3.評価方法ほか留意事項
研究会での発表、課題レポート、議論への参加を見て総合的に評価します。なお、欠席は特段の理由が無い限り認めません。やむを得ず欠席する場合には、前日までに舛方まで連絡してください。
4.入ゼミ課題・選抜方法
(1)1月27日(月)23時59分までに、下記のものをEメールに添付し、送付してください(masukata.s83@gmail.com)。受領メールをお送りします。
①自己PR:所属学部(学科)・学籍番号、氏名、メールアドレス、志望動機、自己PR、研究会への希望などを、A4判1枚に、できるだけ具体的に書いてください。
②恒川恵市『新興国は世界を変えるか 29ヵ国の経済・民主化・軍事行動』(中公新書、2023年)を読み、2500字程度でとくにラテンアメリカにひきつけた書評論文を書いてください。
③自身の関心ある研究テーマにひきつけた書籍(1章分か複数章)あるいは映画を一つ選び、A4版1枚程度で感想を書いてください。
<教員のおすすめ>※もちろん、これに限定する必要はありません。※
*畑惠子・浦部浩之編『ラテンアメリカ 地球規模課題の実践』新評論、2021年。
*ペトラ・コスタ監督『ブラジル 消えゆく民主主義』 Netflixオリジナル作品。
(2)上記のものを遅滞なく提出した者について、統一選考日に面接を行います。
予想されるQ&A
Q.本研究会の狙いは何ですか。
A. ラテンアメリカから「異なる地域」の間にある「見えないつながりを見つけること」です。地域政治・比較政治コースは、国・地域内の政治現象をテーマにするものが多いはずです。もちろんそうしたテーマを選んでもかまいませんが、本研究会はさらに、ラテンアメリカ地域内の視点だけではとらえきれなかった他地域との見えない競争と協力の力学を見つけていく橋渡しもできたらと考えています。
Q.地域政治・比較政治はわかりますが、環境政治はどんな学問ですか。
A. 環境にまつわる政治現象について体系的かつ理論的な考察を行う政治学の一つです。いまや「地球沸騰時代」と表現される気候変動への対策は、環境政治の争点のうちの代表例です。エネルギー転換をめぐる国家と企業の関係、経済開発と環境保護の両立、先住民との共生といった争点も環境政治に含まれるでしょう。SDGsの推進が地域社会に与える「悪」影響、アマゾン熱帯雨林の保全や自然災害をめぐる政治など、環境政治という分野を学ぶうえで特にラテンアメリカは豊富な題材を私たちに提供しています。
Q.研究のテーマは、ラテンアメリカ政治に関連する必要がありますか。
A.担当教員の主なフィールドはブラジルを中心としたラテンアメリカですが、皆さんが研究対象とする国や地域はあまり限定していません。研究会を通じて、ブラジルやラテンアメリカとの関わりに関心を持つ人もいれば、在日ラテンアメリカ人の問題など「日本の中にあるラテンアメリカ」を取り上げる人がいてもいいです。あるいは環境政治の分野から、ラテンアメリカとは異なる地域のテーマを発見して探求する人がいてもよいでしょう。
Q.ポルトガル語やスペイン語など、応募条件はありますか。
A. 学んだ機会があると望ましいですが、必須ではありません。(必要であればゼミを通じて語学力も磨いていきましょう)。特に皆さんと併走することになる教員がお手伝いできることは、主に2点です。第1が、これはぜひ解き明かしてほしいとみんなが思えて、かつ自分も解き明かしたいと思う問い(リサーチ・クエッション)をつくること、第2が、個々の興味関心に有用と思われる分析の方法や、既存研究の紹介を通じて、より深い理論的な分析力を身につけられるように一緒に学ぶことです。
Q.この研究会での目標や大切にしていることは何ですか。
A. 自分の問題関心をつきつめて、論文という形にすることでしょうか。
あえて目標を定めるのであるなら、ゼミ生一人一人が自分の問題関心をつきつめて、学術の領域にまで高め、最後は論文というかたちに表現できるようになることです。研究をすることは料理を作ることに似ています。おいしい料理をつくるためにはよい食材とよい調理の方法が必要です。おいしい料理はよい食材がないとつくれませんが、ただよい食材があっても調理の方法を間違えると、その食材をダメにしてしまいます。特に卒業論文を執筆する時期になると、素材の良さを活かす調理の方法(分析手法)を学びますが、そもそも食材(研究テーマ)がうまく見つからないという方とは、その食材探しから一緒に学んでいきます。論文を書くことに限らず、何かを形にするためには必ず困難を伴います。しかし簡単ではないから面白く、教員である私も含めてゼミのみんなで一緒に悩んで考える時間をとても大切にしています。
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