政治学科 バレット,トーマス

歴史学の観点から、近世・近現代中国の政治・外交・社会について学ぶ新設ゼミ

MESSAGE

内閣府が2023年に発表した「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じない」または「どちらかというと親しみを感じない」と答えた人の割合は86.7%にのぼりました。一衣帯水の中国に対して「負」のイメージを抱く日本人が少なくないことは明らかです。ただ、この「負」のイメージが定着しているからこそ、中国について積極的に学ぼうとする人が減少し、深刻な理解不足が瀰漫しています。

その意味において、「中国通」の養成は、現在の政治界、マスコミ界、大学・教育界、そして企業・産業界にとって喫緊の課題です。2025年4月から始動する本研究会では、こうした「中国通」を養成するため、主に歴史学の観点から、近世・近現代中国の政治、外交、そして社会について学びます

「歴史学のアプローチを用いることで、現代中国について何が分かるのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、外国人から見てときに不可解に思える中国人の言動の背景には、歴史が規定している部分が少なくありません。そのため、中国についての歴史的なリテラシーを育むことは、現代中国を理解し、交流や相互理解を深める上で欠かせない貴重な手段となります。

PROFESSOR & MEMBER

トーマス・バレット(Thomas P. BARRETT)

●専門分野

近世・近代中国の政治外交史、東アジア国際関係史、東洋史。


●履歴

1989年生まれ、英国バース市出身。愛知大学現代中国学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、同大学院博士課程単位取得退学。オックスフォード大学東洋学学部博士課程修了。博士(東洋学)。南開大学(中国)と国立台湾大学にも留学経験あり。

日本学術振興会特別研究員、オックスフォード大学東洋学学部非常勤講師、ウィリアムズ大学オックスフォード大学留学プログラム非常勤講師、ケンブリッジ大学アジア・中東学部研究員を経て、2025年4月より慶應義塾大学法学部政治学科専任講師。

業績や経歴の詳細については、researchmapのページをご覧ください

入ゼミ案内

●バレットゼミの進め方

本研究会では、❶学生による発表とディスカション、❷グループワークとその他のアクティビティが中心となります。

❶ 学生による発表とディスカション

具体的な進め方としては、事前に決まった担当者はレジュメを用意し、以下の内容をそちらに記載していただきます。

(1)該当書籍の内容要約、(2)著者の問題意識および主張、(3)書籍内容を咀嚼した上での「リサーチ・クエスチョン」(=この研究がさらにどのような点で発展可能か)、および(4)ゼミ生一同で議論できる「ディスカッション・ポイント」。

担当者の発表終了後には、ゼミ生一同でディスカッションを行います。具体的に取り上げるテーマについては、以下をご覧ください。

2025年度のテーマ

担当教員が毎年特定のテーマを選定し、それに基づいて関連分野の書籍(学術書・新書・小説を含む)や論文を課題図書として設定します。2025年度のテーマは「『中国人』の行動様式を歴史的に考える」とする予定で、以下の書籍をゼミ生とともに読む予定です(すべてを取り上げるとは限りません)。

寺田浩明『中国法制史』東京大学出版会、2018年。

フィリップ・A. キューン(谷井俊仁・谷井陽子訳)『中国近世の霊魂泥棒』平凡社、1996年。

岡本隆司『腐敗と格差の中国史』NHK出版、2019年。

夫馬進『訟師の中国史――国家の鬼子と健訟』筑摩書房、2024年。

W.G.ウォルシュ(田口一郎訳)『清国作法指南――外国人のための中国生活案内』平凡社、2010年。

費孝通(西澤治彦訳)『郷土中国』風響社、2019年。

山本英史『清代知識人が語る官僚人生』東方書店、2024年。

翟学偉(朱安新・小嶋華津子編訳)『現代中国の社会と行動原理』岩波書店、2019年。

益尾知佐子『中国の行動原理――国内潮流が決める国際関係』中央公論新社、2019年。

安田峰俊『戦狼中国の対日工作』文藝春秋、2023年。

本テーマのほかに、中国・中国史の理解に欠かせない古典的な名著や、ディシプリンとしての歴史学を代表する名著も適宜取り上げます。

❷ グループワークとその他のアクティビティ

このほかに、グループワーク(史料分析、中国ドラマの吹き替え版制作とその視聴会、Wikipediaの記事考証および記事作成作業など)、ビブリオバトル、賞品付きクイズ、卒業論文執筆に向けた発表会や執筆ワークショップなども実施予定です。さらに、学生間の交流を促進するため、定期的な親睦会やイベントも開催したいと思います。

●入ゼミ課題・選抜方法

1月24日(金)23時59分までに、下記のものをメールに添付し、送付してください(tpb41@cam.ac.uk)。

  1. 自己紹介文:所属学部(学科)・学籍番号、氏名、メールアドレスを記入の上、志望動機、自己PR、ゼミへの希望などを、A4判2〜3枚以内にまとめてください。なお、中国語の学習歴がある場合は明記ください(なくても問題ありません)。
  2. 以下3冊の中から少なくとも1冊を読み、「史実とは何か」というテーマについて、5000字以内のエッセイを書いてください。なお、課題図書の内容を要約するのではなく、書籍内容を咀嚼した上で自らの視点から書いてください。
    • E.H.カー(近藤和彦訳)『歴史とは何か 新版』岩波書店、2022年。
    • キース・ジェンキンズ(岡本充弘訳)『歴史を考えなおす』法政大学出版局、2005年。
    • リチャード・J・エヴァンズ(今関恒夫・林以知郎・與田純訳)『歴史学の擁護』筑摩書房、2022年。

上記のものを遅滞なく提出した者について、統一選考日にZoomにて面接を行います。

そのほか、何かご不明な点があれば、バレット(tpb41@cam.ac.uk)までお問い合わせください。

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